Sweet Heart
「無駄だと思うけど、携帯に電話してみるか…。」
そう言って、亜沙美は渋々と鞄の中から携帯を取り出した。
亜沙美が嫌々そうに真智に電話を掛けるのには理由がある。
真智は、あまり携帯を見ないので電話を掛けても、ほとんど気がつかないからだ。
しかも気がつくのが遅すぎて用件が済んだ頃に電話をする。
昔から真智の鈍感さに、俺達は呆れていた。
そんなことを思っていると、流唯がいきなり立ち止まった。
「んっ?あれ、真智じゃない?」
「「えっ!?」」
反対側の歩道を指差して俺と亜沙美に言う流唯。
わけがわからず、俺と亜沙美は指差す方向へと視線を移した。
……はっ?
「誰だよ!?隣の男!」
何とその先には紛れもなく、片手に買い物袋を持つ真智と
見たこともない同い年位の男が同じ買い物袋を持って歩いていた。
一体どうなってんだ!?
見間違い…じゃないよな。
俺が真智を見間違えるわけない…。
でもあの男は誰なんだ!?
真智の何なんだよ!
「へぇ~。真智にも彼氏ができたんだ!」
「結構お似合いじゃない?真智は可愛いし、相手は男前だしね。」
グルグルと頭の中を回る疑問に混乱する俺とは違って
亜沙美と流唯はかなり普通に驚きもせず、平然とした態度で真智と謎の男を見ていた。