不器用上司のアメとムチ
「……あとは、あれだけかぁ」
初めての棚卸しは、苦労しながらもあと一種類の包材だけとなった。
あたしが見つめるの先には、天井近くまで積まれた段ボール。
下から見上げるだけではどうしても確かな数が解らなくて、最後に回してしまったのだ。
「脚立でもあればいいんだけど……」
そう思ってテント内を捜索するも、目的のものは見つからない。
……段ボール、乗っちゃおうかな。
ここにあるのは使わないものって言ってたから、靴で乗っても怒られない……よね?
「よっ……」
低い段ボールに足をかけてから、六段積みの高い山に移動する。
あたしってば、意外に運動神経あるじゃない。と、調子に乗って次は八段積みの方へ移動しようとした時だった。
「きゃ……!!」
足元の段ボールが不安定で、あたしは身体のバランスを崩し……
そのまま硬いアスファルトの地面に、叩きつけられた。
「いったぁ……」
小石で擦れた手のひらと、膝を派手にすりむいた。
ストッキングも破れてしまい、散々な格好だ。