不器用上司のアメとムチ

でも……あれを数えなきゃ、管理課に帰れない。

あたしは痛む手と膝に顔をしかめながら、今度は注意深く段ボールに上って、棚卸しを完了させた。

今、何時だろ……

テントの入り口の電気を消して、ふう、とため息を一つついた時だった。


「……大丈夫か?派手な音が聞こえたが……」


高いところからいやに色っぽい男の人の声が落ちてきて、あたしは視線を上げる。

逆光でよく顔が見えないけれど……たぶん、知らない人。


「……あんた、どこの課?」

「え……管理課ですけど」

「五階か……その足じゃきついだろ」

「うわっ!血がこんなに!」


彼に言われて再び足元を見ると、手当てもしないで動いたせいなのか真っ赤な血がどんどん滲み出してきていた。


「……つかまってろ」

「え、あ、あの!!」


ひょい、と抱え上げられて、気づいたらあたしはお姫様抱っこをされていた。

持っていたバインダーとボールペンが、音を立てて地面に落ちる。

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