不器用上司のアメとムチ
森永さんは窓辺に移動し、あたしたちに背を向けた状態で話し出した。
「久我さんは知ってると思うけど……私、物流の事務に居た頃、同僚にひどいことをして……それで課に居づらくなって管理に来たの」
そういえば。管理ははみ出し者の集まりだと前に久我さんから聞いていたっけ。
やっぱり、森永さんもそうなんだ……
「彼女、私と年が同じで気もあって、だから入社してからずっと仲良くしていたんだけど……彼女に子供ができてから、その関係が変わってしまった。
……というか、私が自ら壊したの……」
窓の外は暗くて何も見えないというのに、森永さんはずっと群青の世界を見てる。
そこに自分の過ちを、重ねているかのように。
「妊娠中、エコーの写真を見せられたり、名前は何にしようという相談に乗ったりしていたときは平気だったの。
その時はまだ、自分の体のこと知らなかったから……」
そう言うと、森永さんがこちらを振り向いた。
そして切なげな表情で、あたしたちに告げた。
「私……子どもができにくい体でね、不妊治療をしているの」