不器用上司のアメとムチ

面会時間が終わりに近づくと、佐々木と森永さんは気を利かせて先に病室を出てくれた。

あたしは改めて久我さんの姿を眺めると、ふっと笑う。


「……なんだよ」

「その眼帯してると……極悪非道な海賊みたいです」

「あぁ、これな。大した怪我じゃねぇんだが、まぶたが腫れ上がってみっともねぇらしい。……全く、お前の顔がよく見えなくて嫌になる」


久我さんの発言で、自分の顔が赤くなるのがわかった。

ど、どうしちゃったの……?
そんな台詞を恥ずかし気もなく言うなんて。

一人照れまくるあたしには気づかず、久我さんは窓の方を見ながら言った。


「小梅」

「は、はいっ!」

「明日も来てくれるか……?」


そう言ってこっちを向いた彼の瞳は“心細い”と訴えているようで、あたしの心臓がきゅぅぅんと音を立てた。

可愛い……

見た目は手負いの海賊なのに、小さな子どもみたい……

< 194 / 249 >

この作品をシェア

pagetop