不器用上司のアメとムチ
「もちろん、仕事終わったらすぐ……」
そう、答えている途中で気がついた。
仕事って……あたし、どこでなにをやればいいんだろう。
副社長室にはもう行けないけど、管理課からは抜けているはずだし。
「……小梅?」
「あたし、また秘書をクビになったんです……だから明日からどこに行ったらいいのかなって……」
「ちょっと待て。秘書をクビって……本当か?」
「はい。京介さんはもともとあたしを次の秘書が見つかるまでの“つなぎ”としか思っていなくて、それが見つかったからあたしは要らなくなったみたいです……」
それを言われたのは今日のお昼頃で、直後は泣くほど悔しかったけど……
今はもう、平気だ。
「あんの野郎……」
あたしの為にこんな風に、怒ってくれる人が居るから……
「お前の籍がどうなってるのかわからないが、とりあえず明日は管理に行っとけ」
「……いいんですか?」
「あぁ。ちゃんと仕事は覚えてるか?」
タイムカードの処理も、使わなくなった包材の棚卸しも、申請書の作成も、トイレ掃除も……
生まれて初めて自分にちゃんと与えられた“仕事”だもん。
「ばっちり、覚えてます!」
笑顔でそう言って久我さんに頭を撫でてもらってから、あたしは病室をあとにした。