不器用上司のアメとムチ
佐々木の予約していたのは隠れ家風の居酒屋さんで、全席個室の落ち着いたお店だった。
店員さんに連れてこられた部屋に入ると、当然ブーイングの嵐が襲ってきたわけだけど……
あたしと久我さんに続いて入ってきた人物を見るなり、みんな息を飲んで固まってしまった。
「やぁ。こんばんは」
京介さんはその異様な空気をものともせず上品に微笑みながら挨拶をすると、「随分狭い店だな……」とか言いながらも、一番いい席を選んでそこに胡座をかいた。
とりあえずあたしも席につこう……と思ったのに、佐々木に腕を引っ張られて個室の外に出されてしまった。
薄暗い通路に出るとすぐに、パニック状態の佐々木があたしに詰め寄る。
「梅チャン!これどーゆーコト!?久我さんと会社でイチャイチャしてたことは目をつぶってあげるから、なんでここに副社長がいるのか説明して!!」
「な、なんでいちゃいちゃしてたって知って……!!」
「二人して遅れるんだもん、それしかないでしょ。つか、それはいいから副社長の件!!」
「あ、うん……でもそれはこれから本人が話すって……」
あたしが言っている途中で、個室の襖が開いた。
「……佐々木」
そして聞こえたのは、地の底から響いてくるような低ーい声。