不器用上司のアメとムチ
17.彼のポケット、飴玉ふたつ

――年末の管理課はとても忙しい。


いつも月末にやってる棚卸しをさらに細かく正確に行ったり、色んな場所の大掃除を頼まれたり、そして新しく入った、この人のせいだったり……


「なあ、これにはどうやって穴を開ければいいんだ?
こんなに正確な位置に二つ同じ大きさの穴を開けるとなると、かなり熟練した技が必要なのでは……?」


あたしがいつかそうしていたように、返却書類入れの前で京介さんが首をひねっている。


「あのー、元副社長。こういう道具をご存じないんですか?」


これぞ事務の七つ道具の一つ……“穴あけパンチ”!

あたしは心の中で、国民的アニメの効果音を歌いながらそれを取り出す。


「なんだこれは」

「だから、こうやって紙を半分に折ってですね……」


親切に教えながら、心の中は感動の嵐だった。

なんと、あたしが誰かにものを教える日が来るなんて!

でも、そんなあたしを誰も褒めてくれやしない。


「あはは、デジャブよね、これって」

「まさか梅チャン以下のお馬鹿さんがいるとはねー」

「他課のファンクラブも続々解散してるって噂だよ……」


もう、笑ってないでみなさんも彼の面倒を見てあげて下さい!

あたしが三人を睨むと、彼らはささっと視線をそらして自分の仕事に戻ってしまう。


ふう、とため息をついてから、あたしは気を取り直してまた京介さんに向き直った。

どんなに面倒な仕事も、それが終わった時のご褒美のことを思えば頑張れるのだ。


今日は、何味かな……?

< 241 / 249 >

この作品をシェア

pagetop