NA-MI-DA【金髪文学少年の日常】
高校生、今現在
高1の夏休み、髪の毛を金色に染めた。


「わー、すごい。うちに金髪のヤンキーがいる」


ナミダの変貌を見た父の第一声はそれだった。


記念撮影しようと言われたときには、こいつ頭のネジ一本とんでるよな、と己の父親のことながら思った。


「夏休みいっぱいはその色なのか?」


カメラを構えながら、にこにこ笑って尋ねてくる父に、ナミダはそっけなく首を横にふった。


「いーや、夏休み終わってもこれのつもりだけど?」


え、そうなの?


父は驚いた顔を見せ、ついで情けなく顔を歪めた。


「ナミダー、父さんは黒髪の方が好きだなぁ。金髪もいいけどさぁ」


「んなもん、聞いてねーし」


金髪にしようと思ったのは、ある人物への憧れから。


と言っても現実の人ではない。


小説の中の登場人物だ。


それを言うと、父は感心したようにうんうんうなづいた。


「さすが親父の孫、ぶっとんでるな」


俺からしたらあんたの方がぶっ飛んでるけどな、と心の中で零す。


ナミダは中学生の頃から、素行の良い方ではなかった。


酒と煙草は中1で覚えた。


喧嘩も結構した。


だから、今更髪の毛の色が変わっただけで、なにがどうこうということもない。


幼馴染の凪人はナミダのことを、『不良文学少年』と称す。


読書好きの、素行不良者。


それがナミダだった。


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