NA-MI-DA【金髪文学少年の日常】
積もりに積もった怒りや憤りが、ついに堰を切ってしまったのだろうか。

「悪いのは私なの、分かってる。暗くて口下手で、友達を作る努力もしない。悪いのは私。でも、それって、あんなにも言われなきゃいけないことなのかなぁ」

遠藤の涙は止まらなかった。

ナミダはただ、背中を撫で続けた。

それ以外に、出来ることを知らなかった。

それすらも、正しいのか分からない。

またしゃくり上げだした遠藤を、ナミダは恐るおそる抱きしめた。

小さくてやわらかな存在は、何の抵抗もなしに、ふわん、とナミダの胸におさまった。

「……お前は悪くないよ」

お前は悪くない、と遠藤に言い聞かせながら、ナミダはこれまで感じたことのない感情をかんじていた。


例えば、祖父が自分に注いだ想い

例えば、父が自分を愛しいと見つめる瞳

祖母の優しさ

母のいのち

凪人との友情


大切な誰かとのつながりがナミダのすべてを創ってきたように、腕の中のぬくもりが、自分のこれからを示してくれているような。

この少女もまた、いつのまにか自分にとって大切な存在になっていたのだと、唐突に理解した。

「……ちえ」

遠藤が、ぴくりと震えた。

「…………ナミダ」

可愛らしい声が、自分の名を紡ぐ。

確かな温みを持って。


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