おいでよ、嘘つきさん。
家を出ると、すぐに向かいの女性が話し掛けてきました。
『魔法使いさん!コマデリが、さっき貴女の家に入ったわよ』

「来てないよ。勘違いじゃない?」

『絶対に入ったわ。あ!魔法使いさん、魔法で飛ばしたのね!大丈夫、誰にも言わないわ』

「ありがとう。これ、パンケーキだよ。良かったら食べて」

『パンなのにケーキ!?魔法ね!あら?そちらの男性は誰?』

「あー、コマ叔父さん。私の遠い遠い親戚なんだ。今から、門まで見送りに行くの」

『まぁ!魔法使いさんの叔父様!どうも、はじめまして!魔法を見せて下さらない?』

「あー!駄目、駄目!コマ叔父さんは忙しいから。じゃあね、さようなら」

『魔法使いさん!遠くに行かないでね!いつでも帰ってきてね!』


向かいの女性も変わりなく、いつも通りだったのでメリッサは安心しました。
一方のコマ叔父さんは小さく囁きました。
『僕は、魔法で飛ばされてコマ叔父さんになっちゃった』

「話しちゃ駄目!もう少し緊張感を持ってよ」

『コマ叔父さんって笑っちゃうよ』

「静かにしなさい」

メリッサは強めの口調で言いました。コマ叔父さんも反省した様子で黙りました。
ただ、メリッサは「コマ叔父さんがコマデリってバレなかったわ!これなら安心ね」と笑顔になりました。

門には、ぴったり15時半に着きました。門番は2人です。1人は細長くゴボウのような男、もう1人はごつごつ太ってカボチャのような男です。

メリッサは、ゴボウとカボチャと愛称をつけました。
ゴボウとカボチャは厳しく怒った表情をしています。
メリッサは、少し怖くなりました。
「もし、バレたら大変な事になるわ」

考えると怖くて、なかなか門に近付けません。

しかし、コマ叔父さんは緊張感もなくテクテクと門へ歩いていきました。
メリッサも覚悟を決め、コマ叔父さんの後を追いました。

ゴボウとカボチャは、メリッサとコマ叔父さんに気づきました。
『とまれ』『とまれ』

メリッサは勇気を出して話します。
「私の叔父さんです。ターコイズへ行くので通して下さい」

ゴボウとカボチャはコマ叔父さんとメリッサを睨みます。
『駄目だ』『駄目だ』

メリッサは焦りながら聞きます。
「3日後には戻ります。何故、駄目なのですか?」

ゴボウとカボチャはコマ叔父さんを睨みます。
『こんな奴、知らん』『こんな奴、知らん』

メリッサは頭が混乱してきました。
コマ叔父さんは、ゴボウとカボチャに睨まれているのに平気なようで相変わらずの気の抜けた顔をしています。
その後も、メリッサと門番の押し問答が続きましたが、決着がつきません。門番は口を揃えて『駄目だ』しか言わなくなってしまいました。
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