おいでよ、嘘つきさん。

最狂

メリッサは途方に暮れてしまいました。
時間はどんどん過ぎ、16時になりました。

30分もの間、門番との押し問答を続けたメリッサは疲れてしまいました。
コマ叔父さんは、呑気な顔で立ってるだけです。
門番も黙ったまま、睨みつけてきます。

「諦めるしかないのかな…」
メリッサが小さく溜め息をついた時、後ろから声がしました。

『やっと、約束の時間に間に合った!』
聞き覚えのある声に、メリッサが振り向きました。
いつも声をかけてくる警察官が笑顔で立っていました。

メリッサは完全に諦めました。
「最悪だわ。狂った警察官に狂った門番!もう、無茶苦茶よ」

メリッサは下を向いてしまいました。
警察官は嬉しそうに近付いて来て言いました。
『16時で助かった!やっと、約束が守れたからな。メリッサ、何で下を向いてる?それに、コマデリ何で変装してるんだ?』

メリッサは心臓が止まるかと思いました。警察官は続けます。
『なるほど、新しい遊びだな!まったく、メリッサとコマデリは仲が良いな。俺も、まぜてくれ』

メリッサは頭が大混乱です。しかし、警察官は嬉しそうに話し続けます。
『2人共、黙ってどうした?いつも、18時に会議を開いてるくらい話し好きなくせに。あ!分かったぞ。声を出しては駄目な遊びだな!よし、俺も参加だ』

メリッサは体が震えてきました。泣いている訳ではなく、恐怖からくる震えです。顔を上げる事ができません。

すると、門番が言いました。
『やはり、コマデリか』『やはり、コマデリか』

コマデリも、我慢できませんでした。
『バレちゃったよ』

門番は笑いながら言います。
『当然』『当然』

メリッサは混乱と恐怖で動けません。コマデリが呑気な声で尋ねます。
『門番さん、メリッサを通してあげなよ。駄目?』

門番は答えます。
『当然』『当然』

コマデリは気の抜けた声でメリッサに言います。
『メリッサ、駄目だって』

この言葉に、今まで動けなかったメリッサが爆発します。
「皆、大っ嫌い!狂ってるわ、私も狂ってしまいそうよ!私を、町から出して!こんな町、大嫌いよ!」

メリッサは混乱しています。今までの我慢が一気に溢れ出たのです。
すると、警察官が言いました。
『よし!俺の勝ちだ。お前達は弱いな!』

メリッサは警察官を睨みつけ怒鳴ります。
「遊びなんてしてない!気持ち悪いのよ!今すぐに消えて!」

『メリッサ!さては、魔法で飛ばすつもりだな。やめてくれ!』

メリッサは、その言葉に驚きを隠せません。しかし、すぐに怒鳴りました。
「私は魔法使いじゃない!ただのメリッサよ!いい加減にしてよ、町から出して!」

悲痛の叫び声に門番が答えます。
『両親を連れこい』『両親を連れてこい』

メリッサは門番を睨みつけ叫びます。
「両親なんて居ない!見た事も、聞いた事も無いわ!」

門番は淡々と答えます。
『四軒先』『四軒先』


聞き覚えのある言葉に、メリッサは気を失いそうになります。門番の言っている意味が分かるからです。
メリッサはコマデリに助けを求めました。
「コマデリ助けて!何とか言ってやってよ!」

コマデリは呑気に話しました。
『門番さんは駄目か〜。警察官さん、何とかメリッサを外に出してあげて』

メリッサは絶望しました。コマデリが、ここまで馬鹿だとは思わなかったからです。
警察官は言いました。
『友達の願いなら断れないな!よし、まかせろ』

コマデリは喜んでメリッサに話し掛けます。
『良かったね!警察官さんが助けてくれるよ』

メリッサは、返事をする気力もありません。

狂った向かいの女性、狂った食料品店の店主、狂った警察官、狂った門番、狂った町、全てに疲れ果ててしまいました。
コマデリの声も耳に入りません。


警察官は毅然とした態度で歩きだし、門番の前まで行きました。
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