おいでよ、嘘つきさん。
病院から出ると、まだ何人かの野次馬がいました。

「プラタナス大丈夫だったか?」

「ヤブ医者にひどい目にあわされたんだろう」

「結局、何て診断されたんだ!?」


両親は恥ずかしさと情けなさで、まともに野次馬と顔を合わせられません。

プラタナスは、はじめ何の騒ぎか分からず戸惑っていましたが状況が分かり、可愛らしく微笑みながら言いました。


「心配して下さったのですね、有り難うございます。両親もとても心配してくれて、少し取り乱していたようです。ですが、お医者様にしっかり診て頂き、もう大丈夫ですわ。お騒がせして申し訳ございませんでした」


あまりにも優雅に語るので、野次馬達の勢いは下がっていき、ぱらぱらと帰っていきました。

町の人々は「カラッポ頭にやっと中身が入った」等と、また下品な噂話を始めました。

プラタナスの生活は一変します。
今までの規則正しい生活ではなく、自由な時間を多くつくり過ごすようになりました。
両親も、病院での出来事をきっかけにプラタナスの好きなようにさせてあげるよう努めました。

母親が髪をとぐ時間も減り、たまに母親がプラタナスに「もう少し、規則正しくしなさい」と言うとプラタナスは「お母様、有り難うございます。ただ、私は今が1番幸せなの」と可愛く言われると何も言い返せませんでした。

両親共に、やせ細り可哀相なプラタナスを見るより、可愛く微笑むプラタナスを見てる方がずっと幸せだったので不満はありませんでした。

プラタナスはふっくらとし、とても血色がよく、目元は優しさに溢れ、そして何より美しく輝く髪を揺らして町を歩くのです。

もちろん、会話も知的で洗練されており誰もがプラタナスを知っていました。

「中身が詰まって美味しそうなプラタナス」と下品な噂が流行りました。
それぐらい有名人になっていたのです。
だけど「からっぽ頭のプラタナス」という噂もまだ囁かれていたのです。
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