おいでよ、嘘つきさん。
大きくなって、今なら町を出られるのです。


トリトマは、サフィニアを必死で説得します。


「この町にいたら、頭がおかしくなる。それは、兄貴が1番よく分かっていることだろう?」


サフィニアは困った表情です。


「分かっている、分かっていない、の問題じゃない。無理なもんは無理だ。頼むから、止めてくれ。頭が痛いよ。」


サフィニアは、本当に辛そうです。

トリトマは、そんなサフィニアに苛立つばかり。


「死にたくないなら、町を出るべきだ。俺は出るぞ。兄貴も出るんだ!」


「だから、声がでかい。トリトマ、お前の噂…。あの噂が、命取りだ。馬鹿なことを大声で話すからだ。」


「はぁ!?何で、俺が馬鹿なんだよ!?馬鹿なのは、町の連中だろ!」


「静かに!聞かれてたら、どうするんだ…。頭が痛い。トリトマの声が頭に響く…。」



トリトマは、そんなサフィニアに怒鳴りました。


「弱音ばっかり吐くな!いいな!?俺は絶対に町を出る!」


すると、サフィニアは静かに答えます。


「トリトマ…。お前なら、出られるかもな…。俺は、無理だよ…。」



完全に怒ってしまったトリトマはサフィニアに怒りをぶちまけます。


「もう分かったよ!兄貴は死にたいんだな!?俺が1人で町を出るって事は、そういう事だぞ!それで良いのかよ!?」


サフィニアは、弱々しい声で答えました。


「仕方ないこと…かもな。」


この言葉に、カッとなったトリトマはサフィニアを殴ってしまいます。


「ふざけんな!!」


そして、家を飛び出しました。

残されたサフィニアは、悲しそうな、辛そうな表情でトリトマの後ろ姿を眺めていました。
< 142 / 185 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop