おいでよ、嘘つきさん。
一進一退の攻防。


トリトマと町の人々の睨み合いが続きます。


両者、一歩も退けない睨み合い。


どれくらいの時間が経ったでしょうか。


先に口を開いたのは、町の人々でした。



「共同墓地に眠らせるのは、町の決定事項だ。どちらにしろ、サフィニアの死を確認せねばならん。」



トリトマは冷静に答えます。


「断る。そんな決定事項なんかないだろ。ただ、勝手に決めただけだ。俺は賛成した覚えがない。」


「ずっと昔から決まっていることだ。トリトマが産まれる、ずっと昔から。」


「なら、見直せ。俺はそんな昔の決まりなんか知らねーし、もし、知っていても従うつもりはない。」



共同墓地に埋葬。

これは、町では当たり前の事すぎて法律なんかでは決められていませんでした。

まさか、トリトマのような反逆者が出るとは想定されていなかったのです。


法律で決まっていない以上、それ以上は強く出られません。

強く出ると、自分が法律に違反してしまうからです。


「トリトマ諦めるんだ。サフィニアを渡せ。」


「いくら言っても無駄だぜ。俺は絶対に頷かないからな。」



女性達は、トリトマを見つめ緊張しています。

男性達も、緊張気味にトリトマを睨みつけます。


トリトマは、徐々に冷静さを取り戻しつつありました。


「もう、一押しだ…!」


トリトマが、そう思った瞬間…。


一人の男が提案します。


「とにかく、サフィニアを確認させろ。トリトマ、お前が殺してない証拠が必要だ。」


トリトマに緊張感が走ります。


「確認だ?断る。俺の兄貴に近づくんじゃねぇ。」


「駄目だ。これでもトリトマに譲ってるんだぞ。それとも、やっぱり知られたくない秘密でもあるのか?」


「ある訳ないだろ。俺は殺してない。兄貴の亡きがらに、気安く触られたくないだけだ。」


「駄目だ。サフィニアを見せない限り、トリトマが殺したという疑いは晴れない。つまり、トリトマを連行することも可能なんだぞ。外傷がないか、それだけでも確認させろ。」


トリトマは、言葉が出ません。

男の冷静で厳しい口調に押され始めたのです。
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