おいでよ、嘘つきさん。
アザミと男の睨み合いが続く中、ついにオリーブが口をひらきました。
「僕は、アザミの子です。おじさん、離してください」

アザミは、オリーブを見ました。
オリーブは、泣かないように必死に我慢しアザミを見つめていました。
アザミは、男に言います。
「早く、返して」

男は苛立ちながらも、少し余裕がある様子で言いました。
「お前、さっき証拠があるかと聞いたな?」

アザミは、少し焦りました。証拠を出されると勝ち目がないからです。
男は、オリーブの腕を離しポケットから紙を出しました。
契約書です。

アザミは目眩がしました。
男は余裕の表情で言います。
「そちらの、御夫妻に証人になってもらおう」

そういうと、今朝オリーブと準備した椅子に座りテーブルの上に契約書を置きました。

御夫妻は、どうしたら良いか分からない様子。
アザミも止まって動きません。
しかし、オリーブは言いました。
「僕はアザミの子です」

男は鼻で笑いましたが、アザミは力を貰いました。
「私が何とかしないと!」

アザミは少し冷静になるよう、一呼吸おきます。
御夫妻を見て、冷静に言いました。
「すみません。ややこしい事になって。ですが、オリーブがしっかりした子だと証明できます。どうぞ座ってください」

アザミは、椅子を二つ引きました。
御夫妻は迷っていましたが、引き下がれる雰囲気ではなかったので従いました。
アザミも残りの椅子に座ります。

奇妙な関係の四人が、一つの紙を巡って話しはじめました。

最初に口を開いたのは男。
「この契約書が何よりの証拠だ」

紙を御夫妻の前に滑らせました。
御夫妻は契約書を見ていますが、内容がよくわかりません。
名前も写真もなく、性別、年齢、出来る事の一覧、金額が書かれているだけです。
オリーブの契約書は。
【性別】男
【年齢】6
【特技】家事のみ
【金額】10000

たった、これだけです。
御夫妻は金額の安さくらいしか理解できません。
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