おいでよ、嘘つきさん。

証拠

男は自信満々に言いました。
「契約書があるんだ。間違いなく俺が正しい」

御夫妻のご主人が答えました。
「これだけでは、何とも。見るかぎり6才にも見えません」

アザミも続きました。
「それだけの内容なら、誰でも書けます」

男は苛立ちましたが、言いました。
「右下の日付を見てみろ。四年前だろ、しかも印刷されてる」

御夫妻は契約書を見ました。確かに、四年前の日付が印字されてます。
男はオリーブに言いました。
「おい、年を言え」

オリーブは小さい声で、
「10才です」と答えました。

御夫妻は悩みました。
確かに年齢は合っているからです。

男は、また自信満々に言いました。
「もう、納得しただろ?さぁ、早く答えろ」

御夫妻の奥様が言いました。
「しかし、年だけというのも…」

アザミも加勢します。
「そうですよ。誕生日が記載されてるならまだしも、たかが年月日です。10才の子供なんて町にいけば、そこらへんにいます」

男は、また苛立ち言います。
「だったら、特技を見ろ。家事って書いてるだろ」

御夫妻は頷きます。
男は続けて言いました。
「この家を見てみろよ。今さっき、掃除したかのように綺麗だ。一人で、こんなに隅々まで綺麗にできるか?」

御夫妻は周りを見ました。
確かに、埃一つありません。毎日、雑巾がけまでしているのが分かります。
アザミは忙しく働いてる女性です。
毎日、そこまで掃除ができるとは思えません。

男はオリーブに言いました。
「おい、特技を言え」

オリーブは答えました。
「家事です」

しかし、アザミは付け加えました。
「オリーブ、忘れてるわよ。読み書きができるんです。しかも、数字の足し算や引き算まで」

これには、男も御夫妻も驚きました。
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