おいでよ、嘘つきさん。
アザミは、慌ててオリーブに言いました。
「何言ってるの?オリーブ、貴方の夢でしょう。どうして、そんな事を言うの!」

オリーブは黙ったまま。

アザミは苛立ってしまいました。
「黙っていたら分からないでしょ。ちゃんと、言いなさい。御夫妻に失礼よ」

オリーブは、目に涙をためています。
しかし、黙って我慢しているだけで何も言わないのです。

アザミは呆れてしまいました。

ご主人がオリーブに言いました。
「うちに来るのが嫌なのかな?」

アザミが慌てて否定しようとすると、オリーブが言いました。
「嫌じゃないです」

アザミは訳が分かりません。
ご主人も首を傾げました。
オリーブは下を向いたまま、それ以上は話しません。
そんな様子をみて、奥様が言いました。
「オリーブ君は、アザミさんと離れるのが嫌なのよね?」

アザミは、驚きました。
しかし、オリーブは顔をあげ頷き言いました。
「はい。アザミと離れるのは嫌です」

アザミは「なんて馬鹿な事を!」と、オリーブを叱りました。
「オリーブ!私といても夢は叶わないのよ?こんな、素晴らしい御夫妻に失礼な事を言って!わがままは止しなさい」

オリーブは下を向いてしまいました。
しかし、ぽつりと言いました。
「僕の夢は、アザミとずっと一緒にいることです」

アザミは呆れてしまいました。
オリーブを無視して、御夫妻に言いました。
「すみません。オリーブは頑固な所があって…。ですが、御夫妻の事は大好きなんです。どうか、オリーブの夢を叶えてあげて下さい」

アザミは必死でした。
こんな機会は二度と訪れないと分かっていたからです。

すると、御夫妻は笑い出しました。

アザミは呆気にとられてしまいます。

奥様が笑いながら言いました。
「やはり、似ているわ。頑固な所も。アザミさんとオリーブ君、私達の話しを聞いて頂けますか?」

アザミは、恥ずかしくなりました。
オリーブは、顔をあげました。
奥様は続けます。
「アザミさんは、オリーブ君と離れるのは平気なのですか?」

アザミは、ハッとしました。
また、自分の気持ちを考える事をしていなかったからです。
オリーブの夢を叶える事しか、頭にありませんでした。
アザミは、悩みました。
「オリーブと離れるのは寂しいわ…。でも、ここに私といてもオリーブのためにならない!」

アザミは決心し言いました。

「はい。オリーブの夢が叶うのなら平気です」

オリーブは、アザミを見ました。
アザミは、真剣な表情です。
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