おいでよ、嘘つきさん。

魔女

プラタナスの部屋の前で一度立ち止まり、

「決して騒がないと誓ってください」

と産婆はまっすぐ両親を見据えて言います。

「神に誓って」

プラタナスに会える事で少し落ち着きを取り戻した両親は誓いをたてました。

ゆっくりと扉が開かれると、中にはベッドの上にちょこんと座っている女の子がいました。

頬はピンク色に染まり、唇は赤く艶めき、少し恥ずかしそうに微笑んでいます。

「プラタナス…!」
両親は誓いを忘れた訳ではないのですが、込み上げてくる感情を抑えることができません。
我慢しても、涙が次から次へと溢れ出てくるのですから。

静かに涙を流す両親を見て、安心した産婆は、
「さぁ、近くにいってあげて下さい」
と優しく促しました。

両親は、ゆっくりと近づきプラタナスをじっくりと見つめました。

近くで見ると、目の窪み、首や手足の細さが気になりましたが、弱々しくも優しく微笑むプラタナスの表情がまるで天使のように感じられ両親ですら戸惑ってしまうほどでした。

すると、プラタナスは伏し目がちになり小さな声で、
「お父様、お母様、ごめんなさい」
と呟きました。

それを聞いた母親は我慢できず強くプラタナスを抱きしめると泣きながら、

「私の宝物のプラタナス!貴女は何も悪くないわ!全て悪夢だったのよ!だから、貴女は悪くない!
可愛いプラタナス!
どうか、謝らないで!!」

と訴えました。

父親は、何も言わずプラタナスの頬を撫で温かみがあることに安堵の表情を浮かべています。

幸せな雰囲気に、産婆も思わず微笑んでいました。

しかし、母親の一言で空気が一変します。

「貴女は誰!?この子はプラタナスじゃない!!」

あまりの急な発言に皆が呆気にとられました。

「頬を撫でるなんて止しなさい!この子は全くの別人なのですから!父親のくせに自分の子供もわからないの!?」
と罵声をあげると、父親の手を払いのけ、まるで汚いものを触ったかのように、手をパンパンと大きくはらいました。

皆は唖然としてしまい、声を失ってしまいました。

母親の目は吊り上がり、眉間には深くシワが入り、口角はへの字に曲がり、動作は大袈裟に、声は太く低く唸るような威圧感があったからです。
まるで、悪魔に取り付かれたかのようでした。
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