オンライン中毒
 彼はエレベーターの灰色の箱の中で、私から少しだけ離れ、壁に寄り掛かり、じっとしていた。


ぽんっとエレベーターが2階へ到着する音がし、降りてみると水色の像と赤の像が向かい合う置物があった。バリのイメージなんだろうか。


「大丈夫? 201号室だから、すぐ横だよ。ほら……」


離れた秋人の腕を引っ張り、引寄せ201のキーを回した。開いてみると和と中、混合させたようなロッジ風の部屋が現れた。


秋人は玄関で勢い良く靴を脱ぎ捨て、酔っ払ってるのにも関わらず、フラフラと体を揺らしながらも上手くトイレを探し出し吐いた。


「うう、うげ。やっぱりウィスキーは駄目だ。強すぎる……うげー!」


吐き出す度に、だんだんまともに喋れている気もする。私はグラスを探し、水を注いでトイレに向かった。


便器に頭を突っ込み、蹲る秋人の背中を摩り、水を差し出した。
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