オンライン中毒
 心療内科は予約がないと入れないだろう。患者は来ないと予想したから引き受けた。


なにが悲しくて、わざわざ早退したのに、仕事をしなくてはいけないのか。そんなに心は広くない。


ふと、横のガラス張りの棚が視野に入った。薬がびっしりと並んでいる。マイスリー、レンドルミン、エフェドリン、リタリン……。私が欲しい薬ばかり。


その薬たちは睡眠薬や、抗鬱剤だった。もしかしたら今よりも、良い気持ちになれるかも知れない。


見つめていたのは1時間くらいに感じられたが、経った数秒で決めた覚悟だった。


唾を飲み、そっと震える腕を伸ばし、手に取った。


そこからはの動作は速かった。バックに数枚のシートを乱暴に放り込み、咄嗟の行動に出た。もう後戻りは出来ない。看護婦が帰ってくる前に身を隠しながら病院を後にした。
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