最後の血肉晩餐
 まじまじと見たチワワのような血だらけの顔。その顔が、恵美や優香への苛立ちと重なって、複数の顔立ちに見えた。


何度も何度も左右の頬を拳で殴った。


ガツ! ガツ! と音が鳴り響く。顔面にも最後に一発入れた。グギッ、ブチッっと嫌な音が鳴った。


「ぎゃー!!!!」


「ごめん。前歯が折れちゃった。恵美との話を聞いているんだろう? じゃあ余計わかるじゃないか。

あいつは六年も付き合ってきた。一途な人間だと、なぜわからない?」


そう言った後、南の顔の前で携帯をバキッっと二つに折り曲げ、助手席の扉を開き、壊れた携帯を草むらに放り投げた。


「なぁにふんのよぉ! かぇしふぇ!」


歯が折れた南は、ちゃんとした言葉には、なっていなかったが、壊れた携帯を取りたいのがわかった。
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