最後の血肉晩餐
「気づいてた? 貴方はいつだってなにかと言うと、お金お金って言っていた。私はお金よりも、貴方が好きだった。ただそれだけだよ」


あの頃に戻ったようだった。これについても昔、よく喧嘩になった。


「独立も考えていたし、人にずっと使われているサラリーマンなんて詰まらないじゃないか?」


恵美の頬に涙が一粒流れた。


「もう終わったことだし、いいの。気にしないで。忘れさせてくれたのが今の彼だったから、今度は彼を大切にしないといけないの」


俺だって好きだっていう気持ちはあった。本気だった。でもそれと仕事は別物だ。


そして今の彼氏に対してもそうだ。別の感情がある。俺はそいつを認めない。


「もっと男を選べよ!」


イライラしてきて、つい怒鳴ってしまった。
< 332 / 672 >

この作品をシェア

pagetop