最後の血肉晩餐
 昔の恵美と大違いだ。いつも強気で仕事もこなし、寝不足でも俺に会いにくる、いつでもエネルギッシュな女だったのに。


「困ってるなら、引越し手伝ってやるよ。早いほうがいい。お前らしくないぞ」


「そうよね……ありがとう」


昔はポチャッとしていた体はガリガリに変貌している。ずっと深刻な状況だったのがヒシヒシと伝わる。


「忘れよう。折角の有給だ」


「ええ、お酒も沢山飲んじゃおう! ここで高速降りれば、すぐ着くわ」


別れるのか……いい旅になりそうだ。


曲がりくねった山道が何度も何度も現れる。森林の匂いが身近に香ってきた。もう少しだ。
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