最後の血肉晩餐
「水戸刑事さん、馬鹿ねぇ……? 貴方恋愛経験少ないでしょう? くすくすくすっ。女はその人を愛してさえいれば、絶対に傷つけないとでも? 痛めつけてでも、独り占めをしたい愛もあるのよ。恵美さんは後者だった。


貴方達が交わした熱い眼差し……貴方は愛を感じたのかも知れないけど、恵美さんは違った。殴り殺してでも手に入れたい。その思いの、熱い眼差しでしたわぁ?


――だって恵美さんは私に小声で言ったんですものぉ。ワインに睡眠薬を入れなさいと――私は怖くなって、貴方にグラスをぶつけてしまったの。飲まなくて、良かったでしょぉ? それとも餌食という愛に溺れてしまいたかったかしら?」


「ぐっ! 嘘だ……お前の目の前にあのグラスを置いたが、例えば恵美さんに差し出したのなら、彼女はきっと飲んだろう。俺は経験上、薬の匂いには敏感なんだ。それだけじゃない。微妙な感情の揺れもな。


地下の祭壇はなんだ? 教会みたいじゃないか? たいそう大事そうに、北川の生首を供え、あれはお前がやったんだろう? 何の意味があるんだ? 胴体はどうした!」


「水戸刑事さん? 私の話を全然信じないのね。お話をしても大変つまらないですわぁ? あの祭壇だって、恵美さんが大好きな北川さんの為に……まぁ、棺おけのようなものじゃないかしら? いつでも好きな人に会えるって素敵でしょう? 恋愛経験の少ない刑事さんに分かるかしらぁー?」
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