優花

体育館に用意されたイスに座り、入学式が始まるまであと10分。
あたしたちは待機していた。

「ねぇねぇ、どこ中出身??」

あたしのとなりに座っていた女子が話しかけてきた。

「あたし、最近ここの町に引っ越してきたばかりで・・・。だから、ここらへんの中学校じゃないの。」
「へぇ~、そうだったの。引っ越してきたばかりだったら、いろいろ慣れないこともあると思うけど、分からないことがあったら聞いてね。」
「ありがとう。」
「いーえ!名前、何ていうの??」
「あたし、木村花っていうの。よろしくね!」
「へぇ~、花ちゃんかぁ・・・。可愛い名前だね!うちはメイっていうの。こちらこそ、よろしくね!」
「うん!」

こうして、新しい学校での友達が1人できた。
メイは黒髪のボブで話してみると元気な明るい子だった。
校長先生たちのめっちゃ長い話をやっと聞き終えて、入学式は終了した。
早速、友達になったメイと教室に戻ったときもいろいろ話した。
今日は入学式だったから、特にやることもなく、教科書が配られてあとは帰るだけだった。

「ねぇ、うちらと一緒に帰らない?」

帰りにメイに声をかけられた。
メイの友達の咲(さき)、美穂(みほ)、香奈(かな)っていう子とも一緒に帰ることになった。

「あたし、咲。よろしくね♪」
「あたしは美穂っていうの。よろしく。」
「うちは香奈。よろしくー!!」
「あたし、花。よろしくね!」

と、こんな感じでこの3人とも自己紹介をした。

「この町はどう?」
「んー、まだよく分からないなー。。。実はきのう引っ越してきたばっかりなの。」
「えぇー、マジで!?」
「急な話で大変じゃん!」
「うん。ホントは一週間前にこの町に来るはずだったんだけど、お父さんの仕事の都合で遅れちゃったんだよね。」
「そっかー。」
「そうなんだー。」

帰り道、歩きながらこんな感じでメイを含めた4人の友達と昨日のことを話した。
今日、早速できた友達と話しながら歩く帰り道は楽しくて家にもうすぐ着くところでもう少し話したかったけど、メイたちとバイバイした。

「花、バイバイ~。」
「じゃあね~。」
「また明日ね~。」
「バイバイ~!」
「うん、また明日~。じゃあね~。」

あたしはメイたちに笑顔で手を振って家に帰った。

「ただいま~。」
「おぉ、おかえり~。」
「どうだった?学校は?」
「初日だったけど、友達が4人もできたよ!」
「おぉ、よかったな。」
「うん!」
「俺、今日仕事見つけてきたんだ。」
「おぉ~、さすがお父さん!・・・もしかして、また大学教授やるの?」
「あぁ。そういうことだ。だから、帰るのが前みたいに遅くなるけど、花なら大丈夫だよな?」
「そっかぁ・・・。分かった。」

お父さんはこの町にやってくる前にも地元の大学で教授をやっていて忙しい日々をあたしと親子二人三脚で送ってきた。
お父さんはそういう仕事の関係であたしが小さい頃から、帰るのがどうしても遅くなってしまっていた。
だから、家に帰るといつも一人で、小さいうちはおばあちゃんの家でよくお世話になって、中学生からはお風呂掃除や夕食の準備などは1人でやってきた。
家に帰るといつも1人っていうのは小さい頃からそうだったから、慣れていたつもりだったけど、やっぱさみしい・・・。
そう思いながら、今日の夜はベッドに入った。






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