腕枕で眠らせて



いつもの【pauze】のいつもの駐車場。



品物を取ってくるだけですぐ戻ると紗和己さんが言ったから、私は車で待ってる事にした。外寒いし。


僅かな待ち時間はランチのお店でも探して潰す。


どこがいいかな。本当にケーキ食べたくなって来ちゃった。デザートが充実してる所がいいな。


ご機嫌でスマホを弄っていると、ふいに助手席の窓がコンコンとノックされた。


顔をあげて、私の表情が一変する。



窓の外には、箱を抱えた玉城さんが後部座席のロックを開くようジェスチャーで伝えていた。



「あ…すみません…」


慌てて後部座席を開いた。意味が分からないままに。


「オーナー、今、業者から電話入っちゃって手が離せないから」


そう言いながら玉城さんはドサリと後ろの席に抱えていた箱を置いた。



「…お疲れさまです…玉城さん、退院されたんですね。おめでとうございます」


「ありがとうございます。って言ってもただの検査入院でどっこも悪くなかったけどね」


腰に手を当ててカラカラと笑う玉城さんは、快活でとてもいい人に見える。


けど。


「オーナーと出掛けてたんですか?いいですねぇ」


「あ…はい。自由ヶ丘の新店舗を見に」


「ああ、あそこ行ってきたんだ。いい立地でしょう?陽当たりもいいし人通りも多いし」


「…玉城さんも、もう行かれたんですか?」


「買い付けの時点でオーナーと一緒に見に行きましたよ。私、これでも彼に頼りにされてるんで」



あははっと陽気に笑って、

彼女は私を傷付ける。





< 204 / 285 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop