腕枕で眠らせて
「…心を伝えるのは難しいですね。何もなくて信じろと云う方が無理な話です」
悲しくて優しい声は、冬の弛い風に似ていると思った。
「でもね、美織さん。僕は往生際が悪いんです。もうひとつ、話をさせて下さい」
「…え?」
顔を上げた私の目の前に、紗和己さんがポケットから何かを取り出して掲げた。シャラリと音をたてて目に映ったそれは。
「………これって……
…もしかして……昔、私が作ってたストラップ…?」
オレンジと透明のビーズクリスタルで綴ったストラップが、私の目の前で冬の弛い光をキラキラと反射させていた。
「8年前、傷付いて人を信じられなくなった男の話を、最後に聞いてくれませんか?」
驚いて目を見開く私の顔を覗き込んで、紗和己さんがそう尋ねた。
瞬きを繰り返しながら頷いた私に少しだけ微笑んで、紗和己さんは冬の空気に溶けそうな低い声で話始めた。