腕枕で眠らせて
―――唇を離した後の、貴方のはにかんだ顔
私、きっと、一生忘れない
「紗和己さんて、本当に三十路ですか?」
帰りの車内でマジマジと視線を送りながら言った私に、紗和己さんは色んな表情を乗せた顔になった。
「な、なんでですか?」
「だって。さっきから紗和己さん、私のコト見ようとしないんだもん。…明らかに照れてますよね」
三十路のイイ男がキスひとつでこのウブな反応。こっちが驚きです。
ああ、ほらほら。また赤くなっちゃった。
「紗和己さん…大人なのにどんだけ純情なんですか」
なんかもう、こっちまで恥ずかしくなってしまって思わずツッコんでしまうわ。
すると、紗和己さんはちょっと眉間に皺を寄せて、なんと車を路肩に停車させてしまった。
驚いて見ていると、紗和己さんはサクッとシートベルトを外し身を乗り出してあっという間に助手席の私を抱きしめだした。
「えっえっ?」
い、意味が分からない。何?どうしよう。
「あんまり煽らないで下さい。
言ったでしょう、たまらなく好きだって。
…こんなに誰かを可愛くてしょうがないと思うのは初めてですよ。歯止めが効かなくなりそうでさっきから困ってるんです」
………ひゃー。
今度は私が顔から火が出そう。
純情な肉食獣がお預け喰らってグルルル唸ってるみたい。
優しい獣は苦しそうにチュッ、チュッと私の鼻とほっぺにキスをして体を離すと、再びシートベルトを絞めてあっという間に車を再出発させた。