腕枕で眠らせて



白の空間に、ほわほわと橙と桃色の光が踊り出した。その隙間を透明の硝子が光の影を落とす。



その夢のような光景をふたり、しばらく無言で見つめた。



ふわふわと、キラキラと、ただ、たゆたう。




「…このお店は、必ず成功します。幸せになれます。僕がしてみせます」


沈黙からゆるりと、紗和己さんが穏やかに、でも力強く呟いた。


「美織さん、貴方が願ってくれたから。僕はもっともっと幸せになります」



誓うように言って、紗和己さんはゆっくりと私の方を向く。


ふたりの間を滑る桃色の光はフワリフワリ桜の花弁のように。

恋の花のように。



「…紗和己さん、私ね。貴方が笑ってくれるとスゴく幸せな気持ちになるの。胸がほっこり温かくなるの」



見つめ合う瞳には、幸せが溢れてる。



「それは僕も同じですよ。

貴女の笑顔が、僕の1番の幸せです」


「恋かな」


「恋ですね」




クス、と笑いあって。胸がときめいた。



紗和己さんの手が伸ばされて、長い指が私の髪と悪戯みたいに絡む。


くすぐるように弄んで、私はそれを心地好く受けとめた。




ねえ。

ねえ。


もう待てないよ。




ズルいな。とっくに心は重なってる。分かってるくせに。



甘くて切ない願いは、彼を映す瞳に籠めてみた。




もう一歩。幸せをしよう。




紗和己さんの長い睫毛の乗った柔らかい瞳が、私と同じ色を映して

髪をくすぐってた指は、そのままもどかしいほど優しく頬を包んだ。





「………好きです、貴女の事がたまらなく」



耳元で囁かれたそれは、甘くて春の風みたいで。




微かな吐息と一緒に重ねられた唇は


切なくて幸せな、恋の味がした。





光のたゆたう空間で


もっともっと恋をした。







< 234 / 285 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop