腕枕で眠らせて



紗和己さんは前を向いたままちょっと言葉を詰まらせて、それから困ったように口を開いた。


「…実は、僕が柚果莉の弟だって知ったら美織さん引くかなと思って。いつ言おうか迷ってたんですよ」


「え?引くって…なんで?」


「だって美織さん、僕の事を女の子だと思ってたでしょう?『サワちゃん』って。

それが実はいい歳したデカイ男だって知ったらガッカリしちゃいません?」


「…あ…」


そう言えば。

私、ずっと『サワちゃん』をユカちゃんの『妹』だと思ってた。

多分弟だって聞いてた筈なんだけど、もうひとりの妹さんの話とゴッチャになった上、名前がなんか女っぽかったから完全に誤解してたんだ。


「そんな男が8年も貴女を想い続けてましたって…気味悪がられるかなあって」


「ぜ、全然っ!!一途で嬉しいですよ!」


…でも確かに、初対面でそれ言われてたらあの時の私だったら戸惑っただろうな。


「だからこないだ美織さんにその話した時も本当は結構迷ったんです。

『サワちゃん』は美織さんの中で綺麗な思い出のまま残しておいた方がいいんじゃないかって」


「そんな事…心配してたんだ…」



紗和己さんも、色々考えてたんだ。

不安だったり、私の事心配したり。

そっか。そっか。




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