そして 君は 恋に落ちた。

「……すみません」


「この棚は基本すぐ使うような物しか置いてないの。
 A〜Dのファイルはこの階の倉庫にあるんだけど……いいわ。連れてってあげる」


「ありがとうございます」


鈴木君は、いわゆる子犬系の男の子で。シュンと落ち込む彼の頭には、犬の垂れ下がった耳が似合う。



「少し出ます」

言って、倉庫の鍵を持ち経理課を出た。




「おー、ハルヒどこ行くの?」


「倉庫にちょっと」


「なんだ、いないのか」



数枚の領収書をヒラヒラさせる彼。

私が口を開く前に、


「すみません!僕のせいです」


後ろにいたはずの鈴木君がバッと私の前に立ち勢い良く頭を下げた。



「は?」


突然の彼の行動に、珍しく瀬川君も目を見開く。



「……鈴木君、別に経理は私だけじゃないんだから。君は悪くないわ。

 ほら、他の子にやってもらいなさい」


営業のエースにビビって泣きそうになってる鈴木君が、可哀想になってしまった。


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