そして 君は 恋に落ちた。

……まだ終わらないの?


時計は21時を回っていて。
すでに経理部には私と松田君しかいない。




今日は諦めようと、デスクを片づけ始めた。ら、


「春日先輩も残業ですか?」


松田君は終わったらしくパソコンを閉じていた。

予想外のことに頭が真っ白になる。



「自分はお先に失礼します」


いつもの爽やかな、甘さの残る笑顔を振りまくとそのまま立ち上がった。

椅子のずれた音に、やっと我に返る。


……行っちゃう…!


「ま、松田君!」



エレベーターに向かう後ろ姿に、慌てて呼び止めた。


私の必死な声に驚いたのか、すぐに振り向いた彼。

私は一気に冷や汗をかいた。



……早く。何か言わなきゃ……

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