そして 君は 恋に落ちた。

「へぇ、そうなの。
 偶然ね」

「……春日さん。ぶっちゃけ、どうでもいいと思ってませんか?」


私の答えが不服なのか、オフィスビルの自動ドアを出て横に並んだ彼は、少し目を細めて私を見下ろした。


正直、いつも爽やかな彼のそんな表情を見た事がなくて、びっくりする。



「そう言えば、先輩と一緒に帰るの初めてですね」

「言われてみればそうね」

「仕事以外でこうやって話すのも初めてです」

「……そうかも」


言われて。二年も一緒の部署なのに、こんな時間が無かった事を思い出した。



「先輩あまり人といませんね」

「そうね。つるむ人いないわね」

「でも営業の瀬川さんとは仲良いですよね?」

「同期だからね」

「ははっ 女の子達羨ましいって言ってましたよ」


笑いながら仕事以外の話を続けることに少し慣れてきた頃、駅に着いた。

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