そして 君は 恋に落ちた。



電車に揺られながら、松田君と私達の降りる駅について話していた。


「……そこを左に入った」

「知ってます!もしかして“美浦の店”ですよね?」

「そうそう。松田君も行くの?

 あそこは色んな種類のお酒があるから好きなの」


降りる駅が一緒だと、呑む店も一緒。


良く会わなかったと不思議に思った時、すでに満員状態の電車が大きく揺れた。


「…っ 大丈夫ですか?」


ドアに背を向けていた私のすぐ目の前には、松田君のネクタイ。

頭上からの私を気遣う声に、ドキリとした。



「……ありがとう」


掠れた自分の声に、余計に恥ずかしくなる。



私が潰れないように、彼は左手をドアに当てながら庇ってくれている。

その姿に申し訳なくなり彼を見た。


瞬間、彼と目が合う。




『次はー美浦ー』

< 25 / 378 >

この作品をシェア

pagetop