そして 君は 恋に落ちた。
電車に揺られながら、松田君と私達の降りる駅について話していた。
「……そこを左に入った」
「知ってます!もしかして“美浦の店”ですよね?」
「そうそう。松田君も行くの?
あそこは色んな種類のお酒があるから好きなの」
降りる駅が一緒だと、呑む店も一緒。
良く会わなかったと不思議に思った時、すでに満員状態の電車が大きく揺れた。
「…っ 大丈夫ですか?」
ドアに背を向けていた私のすぐ目の前には、松田君のネクタイ。
頭上からの私を気遣う声に、ドキリとした。
「……ありがとう」
掠れた自分の声に、余計に恥ずかしくなる。
私が潰れないように、彼は左手をドアに当てながら庇ってくれている。
その姿に申し訳なくなり彼を見た。
瞬間、彼と目が合う。
『次はー美浦ー』
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