そして 君は 恋に落ちた。

「降りないんですか?」


私を困ったように見る彼に、ハッと我に返った。


「……ごめん!気づかなかった!」


エレベーターはすでに5階に到着していて、松田君は私が降りるのを待っててくれたらしい。



「先輩がボーッとしてるの珍しいですね」

「……本当ごめん」

「いえ。瀬川さんの言ったように、医務室行ってみたらどうですか?熱あるのかもしれないですよ?」


言いながら手を私のおでこに当てた。

それを遠巻きに見ていた他の女子が小さく騒いでる。



「松田君。大丈夫だから離して…」


これ以上面倒はごめんです。


「あっ すみません。つい…」

彼も周りに気づいたのか、申し訳無さそうに手を引いた。



「さ、仕事の時間!」


内心ドキドキしていた私の胸の音が彼に聞こえないよう、わざと声を張り上げた。

< 7 / 378 >

この作品をシェア

pagetop