そして 君は 恋に落ちた。
「降りないんですか?」
私を困ったように見る彼に、ハッと我に返った。
「……ごめん!気づかなかった!」
エレベーターはすでに5階に到着していて、松田君は私が降りるのを待っててくれたらしい。
「先輩がボーッとしてるの珍しいですね」
「……本当ごめん」
「いえ。瀬川さんの言ったように、医務室行ってみたらどうですか?熱あるのかもしれないですよ?」
言いながら手を私のおでこに当てた。
それを遠巻きに見ていた他の女子が小さく騒いでる。
「松田君。大丈夫だから離して…」
これ以上面倒はごめんです。
「あっ すみません。つい…」
彼も周りに気づいたのか、申し訳無さそうに手を引いた。
「さ、仕事の時間!」
内心ドキドキしていた私の胸の音が彼に聞こえないよう、わざと声を張り上げた。
.