ダイヤの影

不安

樹里はいつの間にかうとうと眠ってしまった、よほど疲れているのだろう…
そう思ってマスターはそっとしておいた。かつて樹里が眠ってしまったことなど記憶にない。閉店まで3時間近くある、いくらなんでもそれまでには起きるだろう。

樹里は京都でも名の通った老舗料理屋の一人娘で、地元の有名女子大の英文科を出て商社に勤めている。
一方、純の父は地方公務員で母は元中学の教師の典型的なサラリーマン家庭である。
二人の間ではそろそろ結婚の話をしたりもする仲だ。
しかし樹里はそのことを考えると憂鬱になるのだ…


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