止まない雨はない
『うそじゃ…ないです。もうすぐきますから』


またもやそれが精いっぱい。


「そっか。じゃあ、本当にきたら面倒だし、俺と楽しいことでもやりに行こっか…」


そう言って、男の人は私の腕をつかみ、私は引きずられるように立たされた。
その腕の力…かなわないと思った。
周りに人がたくさんいるのに、みんな無関心というか、ただの痴話げんかくらいにしか思っていないのだろう…


『やっ。やめて』


私はテーブルをつかみ、離れないように抵抗をしたけど、
男の人の力に勝つことなどできなかった。

そして、その時、私の頭の中にある場面が浮かんだ…
そう。あの時の元彼の姿が…・


体が震える…意識が遠くなる…そう感じたとき、反対側から腕を引かれ胸に包み込むように抱き込まれた。


安心する胸だった…

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