形見
「こら」
こんなところで、とたしなめても、十希は仔犬のように、要にすりつくのをやめない。
庭がざわめいていた。
要は十希の伴侶だと村では認識されている。
それでも、こんな風にあからさまにじゃれあう姿を、彼らは見たことがなかったのだ。
「十希」
「ん……やだー、かなめっ」
ぺしっ、と額をはたくと、渋々十希が顔を離した。
相変わらず機嫌が悪い。
拗ねても、十希は要にひっつけばすぐに機嫌を直すはずだ。
今日は何がそんなに気に入らないのだろう。