俺様ヤンキーに初恋を捧ぐ
私たちの近くまで来て、ようやく、

龍のお父さんの顔が分かった私は、黙って一礼する。


「…君は、龍と付き合っているのか?」

「・・・」

口を見て、何を言っているのか理解し、また頷く。



「…君と龍はつり合わない。…君は知っているのか?

龍が、藤堂財閥の御曹司だと言う事を?」


「・・?!」

・・・初めて知った事実。私は目を見開いたまま、

龍を凝視する。


「父さん、こんなところに何しに来たんだ?」

「お前を連れ戻しに来たに決まっているだろう?」


「学校が終わったら、会社に帰る、だから今は帰ってくれ」

龍はそう言ってお父さんを睨んだ。


「…外で待ってる。会社に帰らないと、話が先に進まないんだよ。

…杏さんと言ったね・・・さっきも言ったように、

君と龍はつり合わない。だから別れないさい。傷つく前に」


「・・・」

私は今の状況を呑み込むことが出来なくなるほど、

具合が悪くなっていった。

聞こえなくなった耳。

龍の事・・・

具合が悪いのは、病気のせいなんかじゃない。

精神的に限界が来ていた。
< 76 / 109 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop