ウシロスガタ 【完】
「待てよ!冷夏!!」
俺の車から降り、自分の車に乗り込もうとした冷夏の腕を引っ張った。
「どうしちゃったんだよ……」
その時、空が俺達の悲しみに代わって泣いてくれるかのように、大粒の雨が降りだしていた。
「濡れちゃうよ……」
そう言いながら、冷夏は自分の腕から俺の手を離した。
そして笑ったんだ……
悲しそうなあの笑顔で。
冷夏は笑いながら自分の車に乗り込み、俺の手に傘を握らせエンジンをかけた。
「好きになればなるほど、傍にいるのが辛いんだ……」その一言だけ残し、冷夏の車は発車し俺の前から消えた。
「冷夏っ!!」
そんな俺の叫び声も……
降りしきる雨の音に簡単に消され、俺の涙が雨と一緒に流れ続けていた。