ウシロスガタ 【完】
雨が心地良かった……


なんだか全てを消し去ってくれそうで、


俺の涙の代わりに、
一緒に流れてくれそうで……



いつも幸せな冷夏との秘密の場所で、ひとり座り込みただ涙を流し続けた。




“なんで今頃、出逢っちゃったんだろう……”



“もっと早く出逢いたかった……”



冷夏の言葉だけが、
ただ雨の音と共に俺の脳の中を駆け巡り。



この日初めて、



“なんでもっと早く冷夏と出逢えなかったんだろう”


そう俺も感じてしまった。



冷夏が好きでどうしようもなくて



俺の傍からいなくなる事に脅え続けて




愛すれば愛ほど、冷夏の全てが欲しくなって。




いつしか、自分の思いが抑えきれなくなっていた……



冷夏が俺の全てだった。



今思えば、一日が冷夏で始まり、



一日が冷夏で終わっていた。



「冷夏……」



俺は雨に打たれながら、冷夏の名前を何度も何度も呟いた。




冷夏に差し出された傘を



ずっと握りしめながら……。
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