ウシロスガタ 【完】
「………冷夏」


雨の音に消されそうになりながらも、俺の口から出た言葉はそれだけで……



もう他に言葉が見つからなかった。



「幻覚か?とうとう俺、いっちゃったか」



そんな風に話す俺を冷夏はただ見つめていた。



「冷夏だよな?なんでここにいるの?」



冷え切った冷夏の体が俺を包み、



俺の背中で冷夏も泣き崩れていた。




「翔クン、ごめんね……」



その言葉が何を意味するのか分からず、俺は言葉を返す勇気すらなく



その場で平然を装う事が精いっぱいで、他に何もする事ができなかった。




「翔クン、冷夏ね……」



暫く経って話し始めた冷夏に、俺は振り返り笑顔を見せていたつもりだった。





「冷夏……、俺は冷夏を愛してる」




この悲しすぎる恋愛を、



少しだけでいいから続けさせて下さい……




そう心で願い続けていた。







< 234 / 409 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop