ウシロスガタ 【完】
車のドアを開けて、タバコを取った瞬間……


冷夏の香水の匂いが漂っていた。



なんだか、懐かしく感じて俺はその場に崩れ去った。



「冷夏っ……」



どうして、好きなもの同士……


幸せになる事が許されないのだろう。



間違った恋愛だから……?



俺は手に取ったタバコを握りしめ、まるで何かが抜けたかのように座り込んでいた。




「なぁ、誰か教えてくれよ……俺はどうすればいいんだよ」



そうひとり呟きながらも、冷夏がまた来てくれる事を信じ、空を見上げた。






“んっ……”




雨の音が耳に焼きついているのか、


俺の後からは足音のようなものが近づいてきていた。




「………っ!!」


俺は人のぬくもりを感じ、体が温かくなっていた。




そこには、



俺と同じようにビッショリになった冷夏の姿があった。




「本当にバカ……」



その言葉に俺は全ての力が抜けきって、冷夏を抱く事すらできなかった。
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