ウシロスガタ 【完】

[見えない壁]

《今終わったよぉ~!!さとクンは寝てる?》


俺は冷夏の店の近くで中西と車を停め話していた



そんな事、冷夏は知る由もないだろう…



“少しでも冷夏の近くにいたいんだ”



そう言った俺に
中西は何も言わずこの時間まで付き合ってくれていた


「終わったってよ!!」


「あ?今何時?」


「2時20分」


「うわぁ~おせぇ!!明日新装開店だぞ?」


「なっ」


「お前、責任もって起こせな?」


俺は冷夏に急いでメールを打っていた



《お疲れ!俺はまだ外!!もう帰るよ!》


《そうなの?あれからずっと外にいたんだね!もう帰るの?》



《うん、もう帰るよ~》



本当はずっと冷夏のメールを待っていたんだ……



来るかどうかわからないメールをひたすら。



「で、冷夏チャンと会う約束は?」


「してねぇよ」


「は?じゃ、お前なんで待ってたの?俺はなんで付き合ったんだよ!」



「アハハハッ!!マヂわりぃ!!」


「ありえね~帰る!!」


そう言いながら、中西は自分の車に乗り込んだ



「ありがとな!!」


「うるっせぇ!明日、起こせな」


「おう」



中西が走り去った後、携帯を眺めた。


俺も家の方へ向っていた


別に冷夏と約束をしていたわけじゃない


それでも、冷夏の近くにいたかった



冷夏が仕事を終わるのを待っていたかった



《もう、帰ったの?》


少しでも、すれ違うことができたなら…



そう、わずかな期待を込めて信号待ちでメールを入れた



ーー♪♪~♪~♪♪~--


「はえ~♪」


《今コンビニで立ち読みしてる♪もう少しで帰るよ》



「コンビニ?」


《どこのコンビニ??》



信号が青になりゆっくり走りながらメールを打った



しばらくたっても返信が来なくて、


無理やりUターンををして、来た道を猛スピードで戻った



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