新撰組物語




「ダメダメ!ダメよ…!あの人と私では身分が違いすぎる!遊びで終わらされてしまうわ!」


くしゃりと、持っていた紙を握りしめ、自分にそう言い聞かせる。


絶対に超えることの出来ない大きな壁。


女にはそれを打ち破る力なんてない。


ましてや、天皇の息子と……。


あるわけがない……。


美月は身体に入っていた力を抜き、握っていた紙をくずかごの中にいれた。








散策をし終えた拓也が部屋に戻ると、弘世が起きていて、机にまた向かっていた。


辺りにはかみくずの山が出来ていた。


それを拓也がひょいと拾い上げる。


「……恋文か。」


「!、た、拓也様!」


いつの間にか戻って来ていた拓也の方を慌てて振り返る。


「そろそろ身を堅めろ、とは言ったが、こんなに早くにも見つかるとは意外だな。」

弘世の近くに腰を下ろす拓也。


「は、はい。」


「何処の娘さんだ?」


「え?」


「お前がそこまで夢中にならせた娘さんだ。気になるではないか。」


弘世はいつも真面目な奴で、曲がったことが大嫌いなそんな人であった。


今まで女の話しなど縁のないことだと、見向きもしなかった者が、ここへ来て恋文など書きはじめたのだ。


最初は何処かへ送る手紙だと思ったのだが、まさかそれが恋文で、しかもこんなに部屋が散らかるまでも弘世を夢中にさせる相手とは、興味深いものだ。


もちろん、弘世は自分の部下であり、実の兄弟のように育った。


だから、誰よりも一番拓也が弘世の幸せを願っていたのだ。


「私達のすぐ近くに住んでおられます。まるで、桜のように綺麗で美しく、気品のあられる方です。」


「そうか。お前の想いが届くといいな。」


「はい。そういえば、拓也様は今までどちらに行っておられたのですか?」


「ああ、私も愛しい人を見つけに出ていたのさ。」


「愛しい人?拓也様も見つけておられたとは、奇遇ですね。」


「ああ、そうだな。」


桜の花びらが舞う中、慌てた表情をして駆けて来る娘を想う。


普通女性というのは滅多なことでは顔を出さないし、声をかけても上辺だけであって、真意など見えたことがない。


雄一、心を通わせた相手であっても、権力や立場、政治などの前では無力なのだ。


だが、あの娘はそんな気持ちなど、吹き飛ばしてくれる。まるで春風のような存在だ。


< 7 / 7 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

恋影

総文字数/93,162

歴史・時代93ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
我、汝の影となり…。 汝は貴の影となり…。 ーー恋影。 †幕末を舞台にした歴史ドラマストーリーです。 †ストーリーが進むにつれて幕末志士達がたくさん登場してきます。 坂本龍馬/武市半平太/沖田総司/土方歳三/等……。 †幕末・新撰組・歴史ドラマ等が好きな方オススメです。 †感想等もらえたら嬉しいです。待ってます!
桜縁

総文字数/200,932

歴史・時代201ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
愛することが罪なの………? 生まれながらに不運を背負い、故郷である長州藩を守るために、愛する男に刃をむけるしかなかった女【高杉薫】(月)。 散り行く運命にひたすら走り続け、愛する女と新撰組を守るために戦い抜いた男【沖田総司】。 彼らはなぜ出会い、愛し合うのか……? 彼らの運命と恋の物語。 ここから始まる………。 †読んだら感想など貰えたら嬉しいです†
桜縁【弐】

総文字数/1

歴史・時代1ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
愛することが罪なの……? 互いを想い合いながら確かな愛を感じはじめた【高杉薫】(月)と【沖田総司】。 だが、彼らの運命の前に大きな壁が立ちはだかる。 苦難と試練。 そして、戦いと愛。 彼らはなんのために生きて愛しあうのか? 運命と愛の物語。 ~【桜縁】第二幕~ ここから始まる………。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop