冷たい世界の温かい者達
「啓さん? え? 何で志織?
……まぁいっか。 うん。
由薇の事故の事言ったよな? あぁ、結構ヤバイらしい。
……うん。 わかった。 後で」
「志織?」
由咲さんが電話を切ったのを見計らって聞くと、裕樹さんはこくんと頷いた。
「一応学校には連絡を……と思ってね」
「ケガの状況で変わるが、少なくとも2週間は入院だな。
いつ目ぇ覚めるかもわかんねぇし」
亜騎さんは、タバコを吸って紫煙を燻らせていた。
「めんどくせーな……」
「由薇にはお仕置きだね」
裕樹さんもニコリと笑いながら目は真剣そのもので、何だかこちらが恐怖を感じた。
パチッ、と赤々と照らしていたライトは消えて、中から医者が出てきた。
「お、善じゃん。 で。 どう?」
医者に慣れたように聞いた由咲さんに、目を見開いた。
「あー、大丈夫だ。
少し抉れてっけど、内臓も骨も無事だ。
まぁ、傷は残るぜ」
マスクと帽子を無造作に取った医者は、若かった。
色黒の肌に、黒い短髪。
……工事現場に居そうだけど。
なんて失礼な事を考えていると、医者は俺達の姿を捉えると、ホッとしたように肩を下げた。
「あー、お前等が……」
「……」
今ここに居る全員は…どれだけ、俺達を知っているんだろう。
全て?
ぐっと唇を噛んで俯くと、頭に温かい手が乗っかった。
「何だ、ちゃんと歯ぁ食いしばれるんじゃねぇか」
顔を上げると、意地の悪そうな顔で俺達を見る由咲さんが居た。