冷たい世界の温かい者達
『因みに言うと、私の母親は父の妾だったんだ。
私の母親は父の本妻になる為だけに私を産んだ。』
その言葉に思わず勢いよく由薇を見てしまった。
『由咲は本妻の子だ。 本妻も由咲を産んですぐ死んだがな。』
一度言葉を切った由薇は悲し気に目を揺らしていて、自分ではなく由咲さんのことしか気にしていないのに心底呆れた。
『んで?
愛されてないんだと?
勘違いも甚だしいな。』
俺を横目に見てすぐに視線を前に戻した由薇は目を細めて夕暮れを見ていた。
『一度でも智美さんから言われたのか?
一度でも智美さんがお前を否定したか?
一度でも、智美さんはお前から離れようとしたか?』
言われてしまえば全部に頷けなくて、何だか悪いことをして叱られているような気分になって俯いた。
『……一度でも向き合ってみなよ。
何か、見えてくるものがあるよ』
俺の背中を最後にバシッと叩いた由薇は公園の入り口を見て眉を下げて笑った。
『お迎えだよ』と。
夕暮れを背にして怒りの形相で俺達2人に近寄ってくる奴等は、
何故だか心の紐を解くようにじわりと目を濡らした。