冷たい世界の温かい者達






『柚紀っ…』





小さく呟いた由薇の隣で全力で駆ける。




「……クソッ」









忌々しいあの女の狂気染みた声が由薇の携帯から漏れ出ていた。





ムカつく……





廊下を走り抜けて病院の、既に手術室から移った柚紀の部屋に飛び込む。





「柚紀っ……‼」




『……』




「由、薇……」




柚紀は喋りづらそうに、だけど必死に言葉を繋いで今にも下りそうな瞼を必死に開けていた。




『……何?』




手を握りしめて由薇の顔を見つめる柚紀は小さく息を吐いた。













「突、落と……いっ……」







ガクッと音がするんじゃないかと思うほどぐったりと突然項垂れた柚紀の手を、由薇は赤くなるほど握りしめた。







『……不自然、すぎる』









そう。






今回の件で傷を負ったのは柚紀だけではない。





柚紀のそれを狙ったかのように、駆けつけた亜騎さんと裕樹さんまで学校で倒れていたらしい。





頭を鈍器で殴られたような感じで、目はまだ覚めていないらしい。







『……クソッ』







ドン、と力の限り壁を殴った由薇は怒りに目を燃やしていた。





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