冷たい世界の温かい者達
本家の大広間に集められた俺達は敷き詰められた座布団に座りながら由咲さんの姿を待っていた。
由咲さんが部屋に姿を現したのは静まり返って耳が痛いほどの静寂が部屋を包んだ時だった。
「……今回、長の親父が亡くなった今…俺が組長に、若頭には……
由薇を、と思っている」
ガタッ机に足をぶつけながら俺は立ち上がった。
「……何だ? 柏原 朔」
突き放すような言い方をしても、これは引けないんだ。
「由薇を、ですか?
まだ学生ですよ? そんな無茶な……」
「この世界はそんなこと言ってられねぇんだよ。
柏原財閥のお坊ちゃんは考えたことも無い世界……だろうな?」
くっと馬鹿にしたように口角を上げた由咲さんに喉の奥が締まるような感覚が襲い、耳障りな心臓の音が響いた。
「……お言葉ですが、由薇を…女を若頭にするということは重々先を知ってのことですか?」
「当たり前だろ?
考えナシの馬鹿じゃねぇんだよ、俺は」
冷たい目は会った当初の由薇そっくりで……しっかり色は黒なのに、由薇の瞳に見えて少し怯んだ。
『…朔、座れ』
「由薇、でも……」
『座れ。 長に何て醜態晒してんだ』
低い声を出した由薇に拳に力を入れながらやりきれない思いを隠しながらおとなしく座った。
「……これは決定だ。 異論は求めないし、認めない。」
そう言って立ち去った由咲さんの傍には何度か見たことのある20代後半くらいの人がついていた。
…由薇は、これからどうなるんだろうか。
『……悪いな、由咲も親父のことで精一杯なんだ。
送迎は裏に回しておくからお前達ももう帰れ』
諭すようにそう言う由薇の腕をぎゅっと掴むと、由薇は驚いたように目を見開きながら俺を見た。